空調設備の更新において、現在極めて重要な選択肢が「GHP(ガスヒートポンプ)」です。
GHPはガスを主な動力源とするため、夏の電力ピークカットや毎月の電気基本料金引き下げに大きな力を発揮します。電気代高騰へのコスト対策はもちろん、電力需給ひっ迫やBCP(事業継続)対策としても今、改めて注目を集めています。
本記事では、GHPの仕組みと5つのメリット、導入に適した施設や注意点を詳しく解説します。
【この記事で分かること】
・GHP(ガスヒートポンプ)を導入する5つの具体的なメリット
・GHPの特性を最大限に活かせる施設の種類と導入効果
・導入前に知っておくべき初期費用やメンテナンスの注意点
GHPのメリット5つ
GHP(ガスヒートポンプ)は、コンプレッサーをガスエンジンで駆動させる空調システムです。電気モーターで動く一般的なEHP(電気式ヒートポンプ)とは異なり、動力源をガスに分散させることで、施設のコスト削減や安定した運営につながる以下の5つのメリットがあります。
①消費電力を大幅に抑えられる
GHPの大きなメリットは、空調にかかる消費電力を大幅に削減できる点です。
- EHP(電気式):消費電力の大部分を占めるコンプレッサーを「電気モーター」で駆動するため、大量の電力を消費します。
- GHP(ガス式):コンプレッサーを「ガスエンジン」で駆動するため、電気は送風ファンや制御盤などにのみ使用します。
これにより、空調の消費電力をEHPの約10分の1にまで削減できます。現在も続く電力不足のリスクや、政府からの節電要請への対策(ピークカット)としても有効です。
②契約電力を抑えて基本料金の削減につながる
GHPへの更新は、毎月の電気代に含まれる「基本料金」を継続的に引き下げることにつながります。
高圧電力の基本料金は、過去1年間で最も電力を使用した30分間(最大需要電力)を基準に決定されます。猛暑日や極寒期に電気エアコン(EHP)を一斉に稼働させると、この数値が上がり、その後1年間の基本料金が高い状態になります。
空調の動力をガスへ切り替えるGHPなら、施設全体の最大需要電力を低く抑えられます。契約電力そのものを引き下げられるため、固定費の削減につながります。
③排熱を利用して暖房能力を発揮しやすい
GHPは、外気温が氷点下になるような冬場でも高い暖房能力を発揮します。
電気式(EHP)は外気温が下がると熱交換効率が落ち、室外機の霜を溶かす「霜取り運転」のために暖房が一時的に停止する弱点があります。一方、GHPはエンジン駆動時に発生する「排熱」を熱源として暖房に有効活用できます。
| 項目 | EHP(電気式) | GHP(ガス式) |
|---|---|---|
| 霜取り運転 | 頻発し、暖房が一時停止する | 排熱利用により、ほぼ停止しない |
| 立ち上がり | 設定温度まで時間がかかる | 排熱効果で圧倒的にスピーディー |
④受変電設備の容量を抑えられる
GHPの導入は、受変電設備(キュービクル)の初期費用や更新費用を抑えることにつながります。
電気式の大型EHPを新設・増設する場合、必要な電力を賄うために高容量のトランス(変圧器)が必要となり、キュービクル自体の拡張や特高受電への変更など、億単位の費用がかかるインフラ工事が必要になるケースがあります。
一方、消費電力が少ないGHPであれば、受電設備の容量を抑えて設計できます。
- 新築時:設備本体のコンパクト化による「コスト削減」と「省スペース化」
- 改修時:既存の電気容量のまま対応できるため「受電設備増強工事が不要」
電力インフラへの投資を抑えられる点は、長期的な設備計画における大きなメリットです。
⑤自立発電型なら停電時の事業継続に役立つ
企業の社会的責任(SR)として重要なBCP(事業継続計画)対策において、発電機能を備えた「自立発電型GHP」が注目されています。
このシステムは、ガスエンジンが回転する力を利用して内蔵の小型発電機を回し、自ら電力を生み出す仕組みです。万が一、災害などで広域停電が発生しても、都市ガス(または現地に貯蔵したLPガス)とバッテリーがあれば、自立運転切り替えスイッチを入れることで自立運転が始まり、空調を継続して使用できます。
さらに、発電した電力(モデルにより約1kVA〜数kVA)を、空調だけでなく以下の「重要設備」へ供給できる点もメリットです。
- 通信・情報設備(サーバー、Wi-Fiルーター、PC)
- 照明・防災設備(夜間照明、スマートフォン充電)
- 生活インフラ(給水ポンプの駆動、一部のコンセント)
災害時でも、オフィス機能の維持や、病院・介護施設での入居者の安全確保、地域住民の避難所としての機能維持に役立ちます。
「そもそもGHPとは?」「EHPと何が違うの?」という方は、以下の記事をご覧ください。

GHPのメリットを活かしやすい施設
GHPの導入効果は、施設の稼働パターンや電力の使用状況によってさらに高められます。現在の法規制や国策の動向を踏まえ、特に導入メリットが大きい4つの施設例を紹介します。
学校・体育館
国が公立学校体育館へのエアコン設置を進める中、GHPは防災拠点としての体育館に適した空調システムです。
- 課題:夏休みなど特定の時期しか使わないのに、電気式(EHP)だと夏季のピーク電力によって年間基本料金が高い状態になりやすい。
- GHPで解決:夏の電力ピークを抑え、不使用期の基本料金を大幅に削減。
さらに、空間が広く冷え込みやすい体育館でも、エンジン排熱を利用することで足元から温めやすくなります。災害時の避難所に指定されている学校では、自立型GHPが「停電時でも機能する防災拠点」の核となります。
病院・介護施設
24時間365日空調を止められず、現在BCP(業務継続計画)の策定・運用が求められている医療・介護現場では、GHPの信頼性を活かせます。
- 課題:冬場の霜取り運転による室温低下(高齢者の健康リスク)や、医療機器による電力容量不足。
- GHPで解決:排熱を利用した暖房により、室温を一定に保ちやすくなります。
空調の負荷をガスに切り替えることで、受電容量を圧迫しにくくなります。自立発電型であれば、万が一の広域停電時でも空調や照明の電源を同時に確保できるため、BCP対策にも役立ちます。
店舗・商業施設
スーパーや飲食店などの商業施設は、空調以外にも冷蔵・冷凍ショーケースや厨房機器、照明などで常に多くの電力を消費しています。
- 課題:電力使用量が契約上限(デマンド)に達しやすく、電気代高騰がダイレクトに利益を圧迫する。
- GHPで解決:最大の電力消費源である空調をガス化することで、施設全体のデマンドを劇的に引き下げる。
また、飲食店の出入り口付近など、人の出入りが激しく冷気が入りやすい場所でも、立ち上がりの早いGHPの強力な排熱暖房なら、顧客に不快感を与えない快適な空間を瞬時に作れます。
工場・事業所
生産機械がフル稼働する工場では、空調による電力消費を抑えることが、生産効率の向上につながります。
- 課題:新規の生産ラインを増設したいが、キュービクル(受変電設備)の電気容量に余裕がない。
- GHPで解決:空調をガス化することで既存の電気容量に余裕が生まれ、億単位の受電設備増強工事を避けられる場合がある。
現在、製造業に求められている「省エネ法への対応」において、電気とガスの最適なエネルギーミックス(リスク分散)は重要です。
将来的にはカーボンニュートラルな燃料(合成メタン等)への移行も見据えられるため、長期的なGX(グリーン・トランスフォーメーション)投資としても有効な選択肢となります。
GHPのメリットだけでなく知っておきたい注意点
GHPは多くの利点を持つシステムですが、電気式(EHP)とは構造が異なるため、特有の手間や費用が発生します。導入後に「こんなはずではなかった」とならないよう、事前に把握しておきたい2つの注意点を解説します。
定期点検やメンテナンスが必要
GHPには自動車と同様に「ガスエンジン」が搭載されているため、定期的な専門メンテナンスが法律およびメーカー基準で義務付けられています。
- 点検の目安:一般的に稼働5年、または運転10,000時間ごと(※機種による)
- 主な交換部品:エンジンオイル、点火プラグ、冷却水、各種フィルターなど
このメンテナンスを怠ると、機器の寿命が縮むだけでなく、燃費(ガス消費効率)の悪化によるガス代の増加や、最悪の場合は突発的なエンジン故障による空調の完全停止を招きます。導入時は、修理費や部品代があらかじめパッケージ化された「フルメンテナンス契約(保守契約)」を前提とした運用計画が重要です。
初期費用と維持費を含めて導入効果を判断する
コスト面においては、下表のようにEHPとは大きく異なるコスト構造(ライフサイクルコスト)を理解する必要があります。
| コスト項目 | EHP(電気式) | GHP(ガス式) |
|---|---|---|
| 初期費用(本体・工事) | 安価に抑えやすい | 割高(エンジン機構が複雑なため) |
| ランニングコスト | 電気代(基本・従量)が高い | ガス代+少額の電気代で安い |
| メンテナンス費用 | 比較的安価 | 定期的・継続的な費用が発生 |
GHPの導入で経済メリットを得るには、「削減できる電気代」で「割高な初期費用とメンテナンス費用」を何年で回収できるか、10〜15年の長期スパンで試算することが重要です。
なお現在、初期費用の負担をゼロにする「リース契約」や、メンテナンス費込みの「エネルギーサービス(ESP)」を活用し、初期投資なしでメリットを得る施設も増えています。
GHP導入費用を抑える補助金について、以下の記事で詳しく解説しています。

まとめ
GHPは、消費電力や契約電力を大幅に抑えられるほか、排熱を利用した高い暖房性能や、停電時のBCP対策にも役立つ点がメリットです。導入する際は、定期的なメンテナンスや初期費用も考慮し、長期的な投資回収を見据えて試算することが重要です。まずは自施設の稼働状況を踏まえ、専門業者にEHPとの比較試算を依頼してみましょう。
空調コストの削減やBCP対策に向けたGHP(ガスヒートポンプ)の導入なら、東亜ガスにご相談ください。LPガスの安定供給からガス機器の販売・メンテナンスまで、自社一貫体制で企業や施設の安定した設備運用をサポートいたします。
