企業の空調設備を更新する際、GHP(ガスヒートポンプ)の導入は、省エネ化とBCP(事業継続計画)対策の両面で有効な選択肢です。
しかし、高額な初期費用がネックとなり、社内稟議が難航するケースも少なくありません。そのような場合に役立つのが、国や自治体が提供する補助金制度の活用となります。
本記事では、設備担当者や経営層に向けて、導入負担を大幅に軽減できる最新の補助金情報と、申請時に押さえておきたい実務上のポイントを整理しました。
【この記事で分かること】
・GHP導入に適用可能な最新の補助金制度とその対象要件
・補助金申請時のスケジュール管理や対象経費に関する注意点
・初期費用削減とBCP対策を両立させるための具体的なアプローチ
GHP導入・更新時に活用可能な補助金制度一覧
企業のGHP(ガスヒートポンプ)導入や、老朽化した空調設備の更新時に利用できる代表的な補助金制度を紹介します。制度ごとに対象要件や補助額、申請スケジュールが異なるため、自社の事業規模や導入目的に合った制度を選ぶことが重要です。
各制度の詳細を見ていきましょう。
※制度によってはすでに締め切りとなっている場合があります。詳細は公式サイトにてご確認ください。
省エネ・非化石転換補助金(設備単位型)
既存の空調機器を最新の高効率GHPへ更新する際に、最も活用しやすい代表的な補助金です。2026年度からは、従来の制度名称が「省エネ・非化石転換補助金」へ変更されました。
執行団体であるSII(環境共創イニシアチブ)に事前登録されたGHPパッケージエアコンを導入することで、以下の補助を受けられます。
■2026年度の補助率・補助上限額一覧
| 申請枠(設備区分) | 対象設備 | 投資の区分 | 補助率 | 補助上限額 |
|---|---|---|---|---|
| (Ⅲ)設備単位型(従来枠) | SII登録の指定設備 | 更新 | 1/3以内 | 1億円 |
| (Ⅲ)GX設備単位型(メーカー強化枠) | GXに取り組むメーカーの登録設備 | 更新 | 1/3以内 | 3億円 |
| (Ⅲ)GX設備単位型(トップ性能枠) | トップ性能基準を満たす登録設備 | 更新 | 1/2 以内 | 3億円 |
| 同上 | 同上 | 新設・増設 | 1/5 以内 | 3億円 |
■申請前に確認したい注意点
- GX対応メーカーの製品なら上限3億円
GXへの取り組みを表明しているメーカーのGHPは「メーカー強化枠」の対象となり、補助上限額が3億円まで拡大されます。さらにトップ性能基準を満たす機種であれば「トップ性能枠」として、補助率も1/2以内に引き上げられます。 - 新設・増設はトップ性能枠のみ対象、補助率は1/5
従来枠とメーカー強化枠は、既存設備の更新(入れ替え)が対象です。新設・増設で補助を受けられるのはトップ性能枠だけで、その場合の補助率は1/5以内となります。 - 登録型番と募集枠を事前に確認する
補助対象となるのは、SIIに登録された型番の設備のみです。導入予定のGHPが対象かどうかは、SIIの「補助対象設備一覧」で確認しておきましょう。また、公募回によって募集される枠が異なる場合があります。申請時には最新の公募要領で、希望する枠が募集されているかを必ず確認してください。
天然ガス利用設備による強靱性向上対策事業費補助金
停電時でも稼働できる自立対応型GHPの導入を支援する制度です。災害などで電力供給が停止した場合でも、ガスを燃料として自立起動し、冷暖房や一部の非常用電力を供給できます。
BCP(事業継続計画)対策を重視する企業に推奨される制度です。
■補助金制度の概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 主な対象設備 | ・停電対応型GHP ・自立用発電機能 ・燃料貯槽 など ※GHPだけを導入する場合は、室外機2台以上かつ冷房能力の合計112kW以上が必要 |
| 補助率 | 補助対象経費の1/3以内で、停電対応GHPの上限額は66,000,000円 |
| 主な対象施設 | ・避難所(学校など) ・病院 ・福祉施設 ・工場、事業場 など ※対象は事業を営む法人に限られます ※停電時に、空調・照明・コンセントのうち2つ以上を避難スペースへ供給できることが条件 |
■申請前に確認したい注意点
- ガス導管の耐震性が必須
敷地に引き込まれているガス管は、「中圧管」または「耐震性のある低圧管」であることが求められます。 - 最初にガス会社へ確認する
機器を選定する前に、地元ガス会社へ導管の耐震性を確認してもらう必要があります。 - 周辺設備も補助対象になる場合がある
GHP本体だけでなく、自立運転に必要な周辺設備や燃料タンクも対象となるケースがあります。
社会的重要インフラへの自衛的な燃料備蓄の推進事業費補助金
※締め切り済み(2026年10月時点)
病院や福祉施設など、災害時にも機能維持が求められる施設を対象とした補助金です。
LPガス(プロパンガス)災害バルク貯槽と停電対応型GHPをセットで導入することで、補助を受けることが可能です。
■2026年度の実際の補助率一覧
| 導入事業者の区分 | 実際の補助率 | 注意点 |
|---|---|---|
| 中小企業 ※避難困難者が生じる施設を中小企業者が運営する場合 | 2/3 | ネット上の「10/10(定額・全額補助)」は事務局向けの数値であり、民間事業者の自己負担は必ず発生します。 |
| 医療法人・社会福祉法人・大企業など | 1/2 |
※容器と供給設備に発電機と空調機器を組み合わせた場合、上限は5,000万円
■申請前に確認したいポイント
- 工場の空調更新だけでは対象外
「古くなったからエアコンを新しくしたい」などの設備更新のみを目的とした申請は対象になりません。 - 公益的な「防災目的」の証明が必須
対象は病院、福祉施設のほか、自治体から「一時避難所」として指定されている(または指定予定がある)民間施設(工場・事業所)などに限定されます。 - LPガス災害バルクとのセット導入
LPガス災害バルクによる燃料備蓄が条件となります。
SHIFT事業(工場・事業場の省CO2化加速事業)
※締め切り済み(2026年10月時点)
環境省が実施する、工場や事業場全体のCO2排出量削減を支援する補助事業です。
中小企業等の電化・燃料転換・熱回収などで、工場・事業場単位で15%以上、または主要システム系統で30%以上CO2を削減する設備導入を支援します。
■補助金制度の概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 補助率 | 1/3 |
| 補助上限額 | 1億円または5億円(事業区分により異なる) |
| 必須となる削減要件 | ・工場、事業場全体で15%以上のCO2削減 または、 ・空調など主要系統単体で30%以上のCO2削減 |
■申請前に確認したい注意点
- 単純な機器交換(GHPからGHP)は対象外
古いGHPを新しいGHPへ交換するだけでは、原則として補助対象になりません。 - 「燃料転換」や「DX連携」が必要
電気式空調(EHP)や重油ボイラーからガス駆動のGHPへ切り替える「燃料転換」、あるいは「DXシステムによる自動制御」などを組み合わせた計画が求められます。 - CO2削減の「コスト効率」が厳しく審査される
投資額に対するCO2削減効果が採択の重要な評価項目となるため、綿密な計画が不可欠です。
地方自治体独自のGHP導入・更新補助金制度
国の制度に加え、都道府県や市区町村が実施する補助金制度も活用できます。
地域ごとに独自の支援制度が設けられている場合があるため、あわせて確認しておきましょう。
■国の補助金との併用(上乗せ)可否の判断基準
| 併用の可否 | 適用される具体的なケース・条件 |
|---|---|
| 〇 併用できるケース | ・自治体側が最初から「国の補助金への上乗せ」を容認している場合 ・「空調本体は国、配管・設置工事は市」のように経費(見積書)を完全に切り分けられる場合 |
| × 併用できないケース | ・同一の設備、同一の領収書(経費)に対して、国と地方自治体の両方から二重に補助を受けようとする場合 |
■実務上で押さえるべき注意点
- 「満額もらえる」とは限らない
浜松市の制度を例に挙げると、「予算超過時は申請者全員で按分(一律減額)して交付する」ルールでした。自治体独自の補助金は、確実にもらえる金額の事前精査が欠かせません。 - 情報収集のスピードが重要
自治体の補助金は公募期間が短く、予算上限に達すると早期終了するケースも見受けられます。最新情報を逃さないためにも、地域事情に詳しい専門業者と連携して進めることが重要です。
GHP更新補助金の申請時に知っておくべき注意点
GHP空調の更新で補助金を確実に活用するためには、制度ごとの要件を正しく理解し、計画的に申請を進めることが重要です。
ここでは、申請のタイミングや補助対象経費の範囲、他制度との併用ルールなど、申請時に押さえておきたい注意点を解説します。
公募受付期間と工事着工スケジュールの不一致
補助金申請で最も多いトラブルが、公募期間と実際の工事スケジュールのズレです。
■発注・着工のタイミング
交付決定前の発注・着工はできません。すべての補助金制度では、「交付決定通知」を受領した後に発注・契約・着工することが原則です。
交付決定前に発注や工事を進めた場合、その設備は補助対象外となります。
■資金計画で押さえるポイント
補助金は原則として工事完了後の後払い(精算払い)です。そのため、設備費用は一度自社で立て替える必要があります。
また、次のようなスケジュールもあらかじめ考慮しておきましょう。
- 社内の稟議・決裁
- 資金調達
- 設備の納品リードタイム
- 空調停止期間が事業へ与える影響
余裕を持ってプロジェクトを進めることが、補助金を確実に受給するポイントです。
補助対象経費から除外される撤去費・付帯工事費用
申請時に誤解されやすいのが、補助対象となる経費の範囲です。
見積書の総額をそのまま補助対象経費として申請すると、審査で減額されたり、事業計画の修正を求められたりする可能性があります。
■一般的な対象経費と対象外経費の区分
- 補助の対象になる費用
・GHP本体の購入費
・直接的な設置工事費 - 補助の対象外となる費用(自己負担)
・既存の古い空調設備の撤去費
・フロン類の回収・破壊費用
・直接関連しない建物の改修費用
施工業者と事前に打ち合わせを行い、補助対象経費と対象外経費を明確に区分した見積書を作成してもらいましょう。
他の補助金制度との併用(二重受給)制限
同一のGHP設備に対して、国(国費)が実施する複数の補助金を重複して受給することは、原則として認められていません。
■併用の可否
| ケース | 可否 |
|---|---|
| 国の補助金同士 (SHIFT事業+省エネ・非化石転換補助金など) | × 原則不可 |
| 国の補助金+自治体補助金 (経費を明確に切り分ける場合) | 〇 条件付きで可能 |
利用する補助金制度によって実質的な自己負担額は変わります。申請前に公募要領を確認し、自社に最適な制度を選択することが重要です。
まとめ
GHP補助金を活用すれば、空調設備の更新に伴う初期費用を抑えながら、BCP対策も進められます。一方で、補助金を活用するには、制度ごとの要件を満たすことに加え、申請スケジュールや対象経費、併用ルールなどを正しく理解しておくことが欠かせません。
最新情報を確認しながら、実績のある専門業者へ早めに相談し、余裕を持って準備を進めることが、スムーズな補助金申請につながります。
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「そもそもGHPとは?」「EHPと何が違うの?」という方は、以下の記事をご覧ください。

